「AIに仕事を任せる」は、プロンプトの話ではなかった——池尻AI講座レポート
AIに雑に頼むと当たり障りのない返答しか返ってこない。人に仕事を渡すときと同じ「型化」と「AIに質問させる」テクニックで出力の質が劇的に変わる。池尻のAI講座で20名と実証した方法を紹介。
こんにちは!株式会社YTAL(ワイタル)代表の岡崎(Okazaki Yuta)です。
この記事は、講義の体験記事です。ChatGPTかClaudeを横に開いて、一緒に手を動かしながら読んでください。
まず、AIに「雑に」頼んでみてください
今、手元のAIにこう入力してみてください。
自分の組織の宣伝記事を定期的に発信したい
おそらく、「ターゲット読者を明確にしましょう」「月2回のペースで」「SNSで拡散」……といった、当たり障りのない提案が並んだと思います。
本日、MIDORI.so池尻というコワーキングスペース主催の元開催した講座「AIに仕事を任せる技術」でも、20名の参加者に同じことを試してもらいました。ある参加者の感想がこの状況を言い当てていたかもしれません。
「その人らしさが全然ない答えが返ってきた」。
AIが悪いわけではありません。仕事の渡し方の問題です。
賢いモデルは図書館のようなもの。あなたの指示で、「取り出される(活性化する)」本が決まる。

「人に仕事を渡すとき」と同じ構造にする
新しく入ったメンバーに「宣伝記事よろしく」とだけ言ったら、同じようにふにゃっとしたものが上がってくるはずです。
人に仕事を渡すとき、私たちが暗黙にやっていることがあります。
- 役割: あなたは○○として書いてほしい
- 入力: 材料はこれ
- 指示: こういう方針で
- 出力: こんな形式で
この4つを揃えて渡すことを、講座では「型化」と呼んでいます。

では、もう一度やってみてください。さっきの指示を、この4要素で書き直してAIに渡してみます。
あなたは[自分の業種]のマーケティング担当です。以下の情報をもとに、[対象読者]向けの記事ネタを5つ提案してください。トーンは[堅め/柔らかめ]、1つあたり2〜3行で。材料: [自社の強み、最近のトピックなど]
([ ]の中は自分の状況に合わせて埋めてください。)
最初の結果と比べてどうですか?
講座のアンケートでは、この「型化」が最も「役立ちそう」と選ばれました(回答者の約8割)。理由は、おそらくプロンプトの特殊テクニックではなく、普段の仕事の構造と同じだったから。渡す相手がAIになっただけです。
もう一歩——AIに「質問させて」みてください
型化で出力は良くなった。でも、そもそも[ ]を埋めるとき、迷いませんでしたか?
「対象読者って、具体的に誰だろう」「自社の強みって何だろう」——実は、自分の中でも言語化されていないことが多い。
そこで、さっきのプロンプトの末尾に一行だけ足してみてください。
まずは私に質問してから進めてください。
やってみると、AIが「想定読者は誰ですか」「投稿頻度は」「トーンは堅めか柔らかめか」と3〜5個の質問を返してくるはずです。
多くのツールでは「プランモード」として表現されていますが、本質は「まずは私に質問して」と付け加えるだけ。

AIからの逆質問に、すぐ答えられましたか?
講座でこの演習をやったとき、もっとも手応えがあったのはこの部分です。自分が何を作りたいのか、誰に届けたいのか、何が成功なのか——AIの質問に答えようとして、初めて「言語化する機会になった」と気づく。自分も毎回このテクニックにお世話になっています。
AI講義の参加者のAI活用レベルはまちまちで、初めてのChatGPTという方からAPIやCursorを日常的に使うエンジニアまでほぼ半々。それでも「AI側から質問される」のは新鮮だったという反応は共通していました。
ある参加者のアンケート: 「“質問させる”はやっていなかった。日々取り入れていく」。
AIの質問に答える過程は、頭の中の曖昧な前提を言語化するプロセスそのものです。AIを、自分との壁打ちの高速化に使うことが、もっとも費用対効果が良い使い方の一つです。
ここまでの3ステップを整理する
あなたが今やったことを並べます。
| ステップ | やったこと | 変わったこと |
|---|---|---|
| ① 雑に頼む | そのまま入力 | 当たり障りのない回答 |
| ② 型化する | 役割/入力/指示/出力を揃える | 再利用できる指示文が手に入る |
| ③ 質問させる | 「まず私に質問して」を加える | 自分の前提が言語化される |
この3つで、AIからの出力は別物になったはずです。はるかに安定した。
もう一つ、講座ではここに分解を加えました。「定期的に宣伝記事を発信したい」を「ネタを毎日出す」「下書きを作る」「推敲する」のように、AIに渡せる粒度にすること。大きな仕事をそのまま渡すと、AIは「なんとなくそれっぽいもの」を返すしかありません。

これを「毎朝勝手に動く仕組み」にする
ここまでは毎回手で入力する話でした。でも、型化した時点で「変わらない部分」と「変わる部分」が分離できていることに気づきましたか?
- 固定: 役割、対象読者、トーン、出力形式
- 変動: 今日の日付、季節、ランダムに選ばれるテーマ

講座ではさらにもう一歩踏み込んで、この構造をGoogleスプレッドシートに保存し、毎朝9時に自動実行される仕組みを構築しました。コードは不要で、プロンプトを所定の欄に貼り付けるだけです。

一括実行した瞬間、ネタ帳シートにリアルタイムでデータが増えていく。翌朝9時、何もしなくてもシートにネタが追加されている。「雑に頼む」から始めて1時間で、放っておいてもネタが溜まる仕組みができました。
次回のテーマは「評価」です

ネタが毎日溜まる。でも1週間分を見返すと、「使えそう」「微妙」がバラバラのはずです。
次にやるべきことは「良い/悪いの基準」を型化して、AIに自動で採点させること。そしてスコアが低ければやり直し、高ければ成功例として蓄積する。
仕事を任せる → 成果を評価する → フィードバックして改善させる。これはマネジメントの基本サイクルそのものです。相手が人からAIに変わっても、相手が疲れの知らないモデルに変わったからこそ、構造が一層重要になってきます。
BCGの調査では、88%の企業がAIを導入済みだけれど、大きな価値を生んでいるのは5%だそうです。この差は「AIを入れたか」ではなく「業務をAI前提で設計し直したか」にあると考えています。
この記事でやったこと、そのまま続けてください
ここまで読みながら手を動かした方は、すでに「型化」と「質問させる」を体験しています。ぜひ明日から、
AIに何か頼むとき、最後に「まずは私に質問してから進めて」と加えてみてください。
この記事の内容は、池尻のHomework Villageで開催中の講座(世田谷区産業活性化事業・全3回)の第1回で扱ったものです。第2回では「評価の型化」、第3回では「自動改善ループ」に進みます。
「チームや組織で仕組みにしたい」という話であれば、ご連絡ください。型化→評価→改善ループを、業務に合わせて設計するのがYTALの仕事です。初回相談は無料です。